
救いようのない闇
初監督作品『クラッシュ』でアカデミー賞作品賞を受賞したポール・ハギスの最新作。行方不明になったイラク帰還兵の息子を探そうと、元軍警察の父親が独自の調査を進める中、突如として息子の他殺体が発見される。
父親はその真相を探るべく更に調査を進めていく。ここで描かれているのは、現代アメリカの闇。決して日本には伝わってこない深い闇。ある問題の是非を正面から問うのではなく、あくまでも“人間”を描いているところが前作にも共通の監督のやり方で、観客が個々で考えるように訴えている。
ラストシーンの「逆さまに掲げられた星条旗」の意味を我々は今一度考えなければいけない。 『告発のとき』

搾り出して配達
わずか数館から始まった上映が口コミによって2000以上の劇場で公開され、アカデミー賞にノミネートされるまでとなった。
16歳の少女が妊娠する話なんだけど、この主人公が痛快なキャラクターで、悪態をつきながらも持ち前のユーモアのお陰で嫌味を感じさせない。このような会話劇を生み出した脚本家は、それまではただの個人ブロガーで、その軽妙な文章が製作の目に留まり大抜擢されたという人物。非常に面白い。
それぞれ過程では失ったものがあっても最後には全員が何かを「得る」ことになる結末は、切なく感動的だ。 『JUNO』