映画三昧三本寸評
普段はあまり休みのない生活をしてるけど、今週末はなぜか3連休で今日はその初日だった。何をして過ごそうかと考えたところ、今日が映画の日だって事に気がついた。というワケで、なるべく多くの映画を観る事とキリンカップの時間までには家に戻ることだけを決めて渋谷へ。 ◆1本目:『寂しい時は抱きしめて』◆
コミュニケーションもSEXに対する意識もどんどんカジュアル化している昨今。本物の愛情をどうやって探せば良いのかわからずに本当の恋愛ができない。SEXはできてもそこに愛情を見つけられない。そんな現代女性の恋愛観と本当の愛を見つけるまでの一人の若き女性の愛と性を描いた作品。 と、映画の概要を掻い摘んで書けば現代社会の断面を普遍的なテーマで描いたように聞こえるけど、そんなに深いものではない。性描写が露骨で説明的な表現もセリフも意識的に省いているから、 二人のSEXが動物的な行為にしか見えず全く共感できないし、「愛」として描かれているものが一歩引いて見てみると単にカラダの相性に過ぎないというところに無理を感じる。 ただ、主演の二人が美しいのでポルノと官能の境界を行き来しつつもかろうじて芸術性を保っている。 一本目としてはまずまず、と言ったところ。 ◆2本目:『16[jyu-roku]』◆
女優になる為に親元を離れ上京してきた16歳の少女は、あまりにも大きく騒がしい東京に戸惑いつつも仕事・一人暮らし・恋などの初めての経験を通して成長していく。 戸惑いつつも成長していく少女と取り残された感に苛まれる青年の精神的・経済的・心理的コントラストが印象的で、美しい演出やセリフで瑞々しく、時に痛々しく描かれていて、彼らがこの先どのような人生を歩んでいくのか、その先の展開を非常に強い興味を持って観ることが出来る。 ただ、テーマに目新しさが感じられない事と、東京の息苦しさと言うか空虚感の描き方がステレオタイプの域を出ていないような気がした。 一つ大きな驚きだったのは主演女優の東亜優の演技力。ストーリーに関係なくいつまでも演技を見ていられる見ていたいって思った。 助監督の演技指導のタマモノかな? ◆3本目:『秒速5センチメートル』◆
東京の小学校・6年生。転校を繰り返してきた貴樹と明里は、その似た境遇からお互い特別な思いを寄せ合う。明里が栃木の中学に入ってからも文通を続けていたんだけど、やがて貴樹の鹿児島への転校が決まる。貴樹は引っ越す前に明里に会うため栃木に向かうが、乗った電車が記録的な豪雪に見舞われる。 大切な人との待ち合わせ。時間が迫り、自分ではどうすることも出来ない無力感と罪悪感と焦り。このような状況を経験したことのある人なら貴樹と同じく居た堪れない気持ちになるはずだ。その心境をこれ以上ないというくらい描きこまれた光と背景のディテールと共に、見事な情景描写で表現している。60分の短編映画だけどそのクォリティの高さは凡作アニメ数十作品、ジブリアニメなら5作品程度に匹敵する。 ちなみに僕は『もののけ姫』以降のジブリ作品は駄作、少なくとも傑作はないと思っている。経済活動として製作されたこれらの作品にはお金の臭いがプンプンと付きまとい、宮崎駿の作家性が存分に発揮されていないように思うからだ。ジブリ作品は有無を言わさず傑作でハズレがないと手放しで喜んでいるような客観性を欠いたファンには申し訳ないけど、そのようないわゆる「ジブリ信仰」を捨てないとこのような本当の良作を見落とすことになる。 気になってる人もいると思うので一応説明しとくと、タイトルの『秒速5センチメートル』とは桜の花びらが落ちるスピードらしい。 今日一日の最後をこのような作品で締めくくることが出来て非常に気分が良かったので、さほど広くない曲がりくねった道を時速50キロメートルでぶっ放して帰ってきた今日この頃、連休初日。