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夏のオススメ映画 ’08

って、もう秋だけど。今日は久しぶりのブログで久しぶりの映画レビュー。 普段は1回の日記で1本の映画を取り上げるんだけど、それは寸評では書ききれないほどの多様解釈が可能な映画か、もしくは明確な意図を持ってるんだけどその本質を導くのに結構な掘り下げをしなくちゃならない映画かって言うワケで、どちらにしても製作者の思惑をおぼろげながらでも理解しなくちゃならないから、どうしても文章が長くなっってしまう。 例えば 『崖の上のポニョ』とか 『イントゥ・ザ・ワイルド』とか 『蛇にピアス』とか 『ダークナイト』とか 『スカイクロラ』とか 『告発のとき』とか 『闇の子供たち』とか 『JUNO/ジュノ』とか 『休暇』とか。 ここまでさかのぼると春の映画になっちゃうけど、このうちのいくつかはそのうち取り上げるとして、今日はそれ以外の映画の寸評でいこうと思う。 今から書くのは別に長いレビューを書くほどの取るに足らない映画というわけではなくて、読む人のほとんどが未見であると想定すると、あまり長々と書かないほうがいいのかなぁと個人的な感覚として思う映画。寸評を読んで興味を持ったら観た後でゆっくり語りたい、そんな映画です。 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』 お勧め映画を聞かれたときに、いくつか挙げた中のひとつに、こんなものを紛らせたりするんだけど、まだ誰も観てくれない。ほかのは観て感想まで伝えてくれるのに、この映画はまだ誰も観てくれてない。シリーズ16作中4作は間違いなく傑作なのに。その中のひとつがこれ。だからあえて最初に持ってきました。 大人でも楽しめるアニメとして高い評価を受けている映画シリーズ。「クレヨンしんちゃん」というフォーマットだからこそ表現できるものというのがあって、この作品はそのフォーマットの魅力を上手く引き出せている。オリジナル作品でやったらしらけるような内容でも、「クレヨンしんちゃん」でやったら名シーンになったりする。そのポイントをちゃんと抑えてあるので自信を持ってお勧めします。 ここまで言っても誰も観ないんだろうな。まぁ映画は好き嫌いがあるからいいんだけど。 しんのすけに向かって落下する謎の物体から守るために、しんのすけに体当たりする野原一家の愛犬シロ。見事しんのすけを救ったシロだったが、なんとその物体はシロのお尻にひっついてしまう。後にその物体が地球を丸ごとふっとばす威力の爆弾だと判明し、宇宙監視センターが爆弾の回収に動き出す。 地球を守るためにシロを犠牲にしようと考える大人たちに対し、しんのすけはシロを守るために奔走する。自分を守るために弱っていくしんのすけを見かねたシロは、宇宙監視センターに自ら身を差し出すのだった。 果たしてしんのすけはシロを守りきることができるのか。

オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆

『アクロス・ザ・ユニバース』

全編にわたりビートルズの曲を使用し60年代のアメリカに生きる若者たちの青春を描いた独創的なミュージカル。ビートルズより技術的に優れたミュージシャンはたくさんいるのに、ビートルズよりも強烈なメッセージを発しているミュージシャンはそうはいない。そんな時代とともに紡がれた名曲達が現代に生きる我々に訴えかけるものとは。ビートルズ好きにはたまらない作品。

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆

『ぐるりのこと。』

夫婦生活を含めあらゆる事柄について予定を組まないと気がすまない妻と決めたことを守れない法廷画家の夫の話。几帳面な性格が災いし次第にうつ状態になってゆく妻を木村多江が快演。夫役のリリー・フランキーはイメージ通りの飄々とした演技で、時間が解決するしかない妻の状態をただただ見守る。夫婦はどんな選択をするのか。残念な点は2つ。リリー・フランキーでないといけない理由が見当たらない。最後の圧倒的な絵作りが必要な場面がいまいちピンとこない。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

『REC/レック』

最近流行のP.O.V.(Point of View)=主観撮影。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド/HAKAISHA』などが有名だけど、今このブームにのっとった作品が次々と企画されている。レポーターのアンヘラはカメラマンと共に、消防団の同行取材のため、騒ぎが起こったと言うアパートへと向かう。先着していた警官が突如老婆に噛み付かれ失血死の危機に見舞われるが、しかし突然アパートは封鎖されアンヘラ一向は警察やアパートの住民らと共に閉じ込められてしまう。凶暴化した老婆がいるアパートに理由もわからないまま閉じ込められ不安を募らせるがアンヘラは、カメラマンに全てを撮り続けるよう指示。行方不明の若い女。扁桃腺炎を患わせた少女。現在未使用の最上階の部屋。一体このアパートに何が起こったのか。衝撃のラスト15分。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

『最高の人生の見つけ方』

いくつもの病院を経営する大富豪のエドワード。自動車修理工として油まみれになって働くカーター。そんな二人が入院先の病院で同室となりともに余命半年と宣告される。二人は「やりたいことリスト」を手に旅に出る。『見ず知らずの人に親切にする』、『荘厳な景色を見る』、『スカイダイビングをする』、『刺青をする』、『泣くほど笑う』、『世界一の美女とキスをする』。これらを一つ一つ実行していくんだけど、旅は意外な形で終焉を迎える。リストは完遂できたのか。これまで過ごして来た人生よりも最後の半年のほうが活き活きとしている。六ヶ月間で一生分笑う。そんな人生も悪くない。名優二人の演技だけでも見る価値あり。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

『ノーカントリー』

今年のアカデミー作品賞。余計な演出や音楽など不必要なものは極力省き補足的に扱われがちなモノローグに多分な意図を含ませている。しかしその意図を正確に捉えることが非常に難しい作品のように思う。この作品を通して何かを伝えようとしていることは十分わかる。しかしそれが何なのか。原題は“No Country for Old Man”。邦題で省かれた“for Old Man”の部分が重要なヒントになりそうだが。コーエン兄弟よ。あんたら一体なにが伝えたくてこの作品を作ったんだ。誰か僕にレクチャーしてください。余韻は今も続きます。

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆

『バンテージ・ポイント』

スペインのサラマンカで開催されていた首脳会談の席で米大統領が暗殺された。事件前後の23分間が狙撃の瞬間を目撃した8人の視点で描かれる。視点を変えるたびにパズルのピースがはまるように明らかになっていく真実。この視点によって真実が異なる様を描く構成は黒澤明の『羅生門』に敬意を払ったものだと気づく。最近リメイクばかりで進歩のない米映画界だけど本来、古典とはこういう形で蘇らせてこそお互いの作品が活きてくるのではないかと思う。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

『潜水服は蝶の夢を見る』

『ELLE』といえば世界で最も有名なファッション雑誌のひとつだけどその編集長であるジャン=ドーが突然脳梗塞で倒れ何週間もの昏睡状態に陥る。一命を取り留めたジャン=ドーに残された自由は左目の瞼のみ。それ以外の神経が麻痺した状態で目を覚ます。言語療法士が苦心の末編みだしたコミュニケーションの手段は誰かがアルファベットを順番に読み上げ意図した文字のところでジャン=ドーが瞬きをする。一文字ごとにアルファベットを読み上げ一文字ごとに瞬きをする。この途方もない日の暮れるような方法を用いジャン=ドーは自伝を書き始める。瞬きのその数、なんと20万回。何とか出版に漕ぎ着けたその三日後彼は息を引き取る。そうして書かれた自伝の映画化。

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆

『ヘアスプレー』

おチビでおデブな女子高生トレーシーは大好きなテレビ番組のダンサー・オーディションに合格する。やがて、その風貌と明るい性格からかつてのナンバーワンダンサーを脅かす存在になる。スリムでスマートな他のダンサー達の中で異彩を放つトレーシーは一見コンプレックスと思われがちなその体型を極めてポジティブに捉えている。そんなマイノリティが生きにくい時代だった1962年。トレーシーは「人と違うことこそがいいことなのに」と言い放つ。未来を見据えた見識と信じるものを疑わない直向さはやがて周囲の意識をも変えてしまう。我々は人と違うことを忌み嫌う民族だ。自分が人と違わないことを確認しあい安心する日本人。「KY(空気が読めない)」などという言葉はそういった周りの顔色を伺ってコミュニケーションを計ろうとする民族性と行動原理がトレンドに支配されてしまっている現代性を如実に表している非常に貧しい言葉ではないかと思う。人と違うということは特別なことなのにね。

オススメ度:★★★★★★★★★☆

『転々』

80万円の借金のある文哉は取り立て屋から「散歩に付き合えば100万やる」と言われ期限のない散歩に同行する。散歩の途中で出会う人々との交流を通して文哉は幼いころに親に捨てられた心の傷を癒していく。散歩の目的や押し迫る散歩の終焉など興味の対象を散在させているので、ただただ散歩をしているだけなのに飽きさせない。実はこの監督あんまり好きじゃないんだけど、この映画は良いです。あと新人の女優さんが不思議なキャラクターをとても魅力的に演じています。今後が楽しみな逸材だと思います。――――――この『転々』の寸評は去年の年末に別のところで定期的に書いてるブログに載せたものを転載したんだけど、この新人の女優さんというのが今注目の若手・吉高由里子。『蛇にピアス』の主演の人です。若いころの大竹しのぶを髣髴とさせる生まれながらにして女優。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

『ONCE ダブリンの街角で』

制作費はたったの1800万円。わずか2館の公開から口コミであれよあれよという間に140館までに拡大。お金なんてかけなくても軸がぶれなければこれだけいいものが作れるという珠玉の作品。これまでここで書いたレビューが感想だとするとこれは確実にお勧め映画。内容にはあえて一切触れません。実際に観てほしいから。まさに奇跡のフィルム。

オススメ度:★★★★★★★★★★ そんなワケで、本当は1つの作品についてじっくり書くほうが好きなんだけど、今回は長いブランクを埋めるための肩慣らしということで。どうかひとつ。


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