利己的な正義の終局
久しぶりのブログです。 一昨日カフェでたまたま隣の席に座った人が号外を持ってました。とうとう打ってきたかと。それにしてもまぁ、ご丁寧に「誤報」まで流して相も変わらず茶番劇につき合わされてるマスコミと、そのマスコミに踊らされてる日本国民だけど、みなさん、ちゃんと真実が見抜けてますか? というワケで"真実”といえば先日、2008年の「映画館大賞」が発表された。「映画館大賞」っていうのは独立系映画館のスタッフが決める賞で、同じくショップ店員が選ぶ「本屋大賞」や「マンガ大賞」のように何のしがらみも受けない"正当な評価"が期待されている。 つまり大きな映画会社やテレビ局の後ろ盾によって簡単に操作できる興行成績や観客動員数などとは違い、それらの影に埋もれてしまいがちな作品も含めて純粋に「いい作品」を決めようという賞なワケだ。 独立系の映画館はスタッフが上映作品を決める場合が多く、半年先の上映作品まで決められているシネコンのスタッフに比べ、相当数の映画を観て吟味している。そういった意味で正当な評価が期待されている。 1位は『ダークナイト』で、僕がこのブログで去年のベストムービーに選んだ作品だ。アメリカでは大ヒットだったけど日本ではイマイチ盛り上がらなかった。
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『ダークナイト』は簡単に言うと、前作『バットマン・ビギンズ』の続編でバットマン新シリーズの第2作目だ。ブロックバスターをあまり高く評価しない僕がベストムービーに挙げるくらいだから、そうとう素晴らしい作品だと解釈してほしい。 バットマンが他のアメコミヒーローと違うところは、スーパーマンやスパイダーマンのような超能力や特殊能力は一切持たずに体ひとつで戦っているところだ。ブルース・ウェインは父から引き継いだ会社の社長さんで超が付くほどの資産家だ。そんな彼がなぜバットマンになったのかは、前作『バットマン・ビギンズ』を観てもらうとして、彼の後ろ盾はその豊富な資金力で過去に会社で開発した技術を掘り起こし、それを応用して武器や防御服、装甲車を作っている。 誰に頼まれるでもなくゴッサムシティを守る為に夜な夜な悪と戦い傷つく彼は、いわば一人自警団ってワケだ。しかし法では裁けない悪を強大な力で制する彼は法治国家においては犯罪者として扱われてしまう。さらに彼の存在そのものが注目を集め、新たな悪を呼び寄せてしまうと言う自己矛盾をも孕む。その悪がまさにジョーカーで彼らは呼び合う様にこの世に生まれた。 法の精神に反する者を悪と呼ぶならば、悪を裁くために法を犯す行為ははたして正義と言えるのか。 そんなジレンマに悩み続けるバットマンをジョーカーは執拗に攻め内面から破壊してゆく。悪を断つために生まれたバットマンの存在を成立させる要素こそがジョーカーであり、ジョーカーもまた然りというこの皮肉。この負のスパイラルからどう脱却するのか。そこがこの映画の見所だ。 映画を観慣れている人ならこの構図が何を模したものなのかおおよその見当がつくだろうけど、この映画はそんな社会性と娯楽性を高次元で昇華させた2008年一番の名作だ。 一応簡単に説明しておくと、このバットマンが置かれている状況がまさに今のアメリカの姿そのものではないか。誰に頼まれるでもなく「世界の警察」を名乗り、悪の枢軸を叩くためと大儀を謳い攻撃を仕掛ける。しかしその絶対的な力がさらに強大な悪を生み出している。ここ数年アメリカを悩ませてきた命題だ。 自らが信じる正義の遂行のために手段など選んでいられない。バットマンはついにはエシュロンにも手を出すが、その決意かもたらす結果とは何なのか。 非常に興味深い内容だ。 最後に忘れてはならないのがヒース・レジャーの存在だ。彼が演じたジョーカーがなければ、ここまで絶対的な名作にはなり得なかったかもしれない。オリジナル版のジョーカーの演じたのは、名優ジャック・ニコルソンだ。実績のない若い俳優にとってそんな大役を担うことは相当なプレッシャーだったはずだ。ジャックでさえジョーカーを演じたときはかなり神経をすり減らしたそうだ。 ジャックはジョーカー役に決まったヒースに対し、「こんな役はやるべきじゃない。命を削ることになる」とアドバイスを送ったらしいが、しかしヒースはその大役をパーフェクトに演じきった。オリジナル版を凌駕するほどの狂気を演じている。 文字通り命を削って演じたヒースのジョーカーは映画史に名を残すことだろう。なんたってDVD・BDのジャケットが主人公のバットマンじゃなくてジョーカーだからね。
![blog_import_50647239dcee7.jpg](https://static.wixstatic.com/media/6727a4_df38abd7c4fa4afd86b4701df54ef157.jpg/v1/fill/w_150,h_240,al_c,q_80,enc_auto/6727a4_df38abd7c4fa4afd86b4701df54ef157.jpg)
P.S. ① 「映画館大賞」の2位以下は次のとおり。 星はオススメ度。無星は未観。 2 ぐるりのこと。 ★★★★★★★★☆☆ 3 おくりびと ★★★★★★★★★☆ 4 歩いても 歩いても 5 トウキョウソナタ 6 イントゥ・ザ・ワイルド ★★★★★★★☆☆☆ 7 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) 8 ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 9 ノーカントリー ★★★★★★★☆☆☆ 10 崖の上のポニョ ★★★★★★☆☆☆☆ 11 闇の子供たち ★★★★★★★★★☆ 12 クライマーズ・ハイ 13 ラスト、コーション ★★★★★★★☆☆☆ 14 接吻 ★★★★★★★★☆☆ 15 イースタン・プロミス 16 レッドクリフ Part I 17 ダージリン急行 18 アフタースクール 19 ザ・マジックアワー 20 落下の王国 P.S. ② 誕生日のお祝いメッセージを送ってくれた人 ありがとう。 後日改めて返信させてもらいます。