

人情が織り成す群像劇
人気作家・東野圭吾の最新作。彼の作品に度々登場する刑事・加賀恭一郎が活躍する話。
今度の舞台は日本橋。江戸の風情が残る下町ならではの「人情」がある出来事を難解にしていく。一見無関係なように見えて実は一本の糸で繋がっているという9つの話が複雑に絡み合い、それを加賀恭一郎が解いていく。
内容に大した驚きは無いけれどその構成力には脱帽です。彼にしか書けない話。 『新参者』
東野圭吾


対話編
直木賞受賞作の『GO』でおなじみの金城一紀が描く痛快な青春劇の中編小説集。
親しくした人間が必ずこの世を去ってしまうという数奇な運命に見舞われた主人公の人を愛したくても愛せない切なさを描いた「恋愛小説」。
余命幾許も無い主人公が思いを寄せる女性を自殺に追いやった相手に復讐を果たす過程を描いた「永遠の円環」。
東京から鹿児島まで老弁護士との下道でのドライブに付き合うだけと言う高額バイトを紹介され、その道中で明かされる老弁護士の不器用で古臭い、だけどほのかに暖かい悲恋を描いた「花」。
どれも派手さは無いけれど愛しく温かい物語3編。 『対話編』
金城一紀


無意識の意識
監督第二作目。白い何も無い部屋で目覚めた主人公は本能からか脱出を試みる。
しかしこの部屋の中でできることはある一つの行為のみ。一方、メキシコのある町では一人の中年ルチャドール(プロレスラー)が若手人気レスラーとの大事な試合の日を向かえていた。
この二つのパートを交互に観ていくわけだがどういった繋がりがあるのかは最後までわからない。というか、観る人によっては最後までわからない。発想の元になっているのは自信のコント集『VISUALBUM Vol.ばなな』の中の「マイクロフィルム」だろう。
本編の大半は最後の15分の為の前フリって言う構成は前作と一緒。でもそのフリが冗長すぎてダレてしまう。彼の笑いになれている人にとってはこの程度の笑いでは満足できないしオチが読めてしまう。
箱の中のルールや物理的原則に不備があって詰めが甘いところや、ブルーバックでの演技とCGが噛み合っていないなど時間をかけさえすれば何とかなった部分が多かっただけに非常に残念。
しかし監督が笑わせようとしているところではあまり笑えないけど、なるほどと思わせたいところでは