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戦場に咲く花

先日、Webマガジンの「経営者インタビュー」というコーナーの取材が事務所に来ました。インタビュアーはサヘル・ローズさんでした。サヘルさんは以前、滝川クリステルに似ていると言うことで、滝川クリサヘルという名前でTVに出ていたこともあるし、J-WAVEのレポーターもしていました。今ではテレ朝の夕方のニュース番組の中の「東京見聞録」と言うコーナーで、他の外国人タレントさんとレポーターをしていたりしているので、観たことがある人もいるかもしれません。今は女優業に力を入れていて、最近では映画『東京島』に物語の鍵を握る重要な役として出演しています。

サヘルさんは11人兄弟の末っ子としてイランで生まれました。生まれつき体が弱く、大変貧しい家庭であったため、育てるのにお金がかかるので生まれてまもなく母親に病院に置き去りにされてしまいました。その後、無事に家族の元に届けられるのですが貧しい環境は変わらず、食事のときはいつも競争で末っ子のサヘルさんは満足に食べ物を口にすることができませんでした。 そんな辛い生活が続いていたある日、その状況にさらに追い討ちをかけるように事件は起きます。4歳の時でした。イラン・イラク戦争の空爆でなんと両親と兄弟10人を同時に失い、サヘルさん自身も瓦礫の下敷きになってしまいます。 一方、戦争の影響で大学が休校となり、ボランティア活動をしていたフローラ・ジャスミンさんは爆心地で生存者の救出活動を行っていました。しかし実際には生存者の救出ではなく遺体の回収でした。その日の作業を切り上げようと移動車両に向かっている途中、最後にもう一度一人で現場の確認に向かったフローラさんは瓦礫の隙間から青い花が咲いているのを見つけます。近寄ってみると瓦礫の下に少女の手を発見するのでした。その時点で行方不明者が生存可能とされている72時間をとっくに過ぎていました。まさに奇跡の救出でした。 そんなサヘルさんを僕がはじめて知ったのはJ-WAVEでしたが、その生い立ちを知ったのは2年半ほど前のクリサヘルとしてテレビに出ていたときでした。それ以来、ずっと気になっていた方なので、今回お会いできることになり改めて本を読み返してみたところ、インタビュー当日がサヘルさんの誕生日の中日であることが分かりました。実はサヘルさんには出生がはっきりしないイランで生まれたことから誕生日が二つあって、戸籍上では10/21、パスポート上では10/23となっているのです。そしてインタビューがあったのが10/22だから中日に当たるわけです。 一期一会と言う言葉がありますが、今後会う機会がなかったとしても出来る限りのおもてなしをしたいと思っている僕は、最後に花をプレゼントしました(ちなみに一期一会とは、今後何度も会う機会を有する相手を対象とした言葉)。青い花(サヘルとフローラが出会うきっかけとなった花)に囲まれた薔薇(サヘルのミドルネーム)の花束を作ってもらい、インタビューの最後に渡しました。とても喜んでいただけてよかったです。 ところで、イランの貧しい家庭に生まれ空爆で瓦礫の下敷きになっていたサヘルさんが、なぜ日本の芸能界で活動されているのか気になっている人もいると思います。サヘルさんはフローラさんに救出された後、孤児院で育てられますが、その後、色々あって日本に来る事になるのですが、日本に来てからも厳しい生活は続き、ツナ缶を二日に分けて食べるような生活が続きました。その後も色々あって芸能界の仕事を始めます。 この『色々あって』の部分が気になった人は自身の著書『戦場から女優へ』を読んでみてください。本当に壮絶な体験を赤裸々に書かれています。サヘルさんは現在25歳ですが、一生かかっても体験しきれないような過酷な人生を送ってこられました。しかしテレビで見るサヘルさんからは過去に経験した悲惨さなど微塵も感じさせない明るく前向きな方であるような印象を受けます。サヘルさんにお会いするまではそのギャップを埋めることがなかなか出来なかったのですが、今ではその何割かが埋まったのかなと言う感じがしています。 今回の日記でサヘルさんのことを取り上げたのは、この出会いをきっかけに色々な気付きがあったからです。それが何であったかは各人が個々に感じることなので具体的には書きませんが、と言うより具体的に書けるほど自分の中でまだ漠然としていて咀嚼しきれていないのですが、僕が今後生きていく上で重要な何かであるような気がしています。


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